ep.2
Dawn~黎明~


  

EXPED AGとして新たな冒険へ繰り出したAndiとHeidiだが、代理店として取り扱うブランドは日に日に増え、それらはスイスでも好意的に受け入れられ、嬉しい事に好調な滑り出しで数年ですっかり軌道に乗る事ができました。

Andiはかつてアウトドアショップで働いており、その時培った人脈やノウハウが存分に発揮されたに違いないでしょう。

  

しかし、代理店としての経営が好調になればなるほど、”アウトドア”へ触れ合う機会が減っている事に二人は気付きます。

昼食も取らずに梱包をし、夕方までに出荷させる…その日々の繰り返し。。

EXPED AGのためにもお金を稼ぐ必要があり、そのためには仕方がないと割り切りながらも、次第に精神も削れら希薄になっていきます。

また、欧米のブランドを主として扱う中で、それらがスイス乃至はヨーロッパ内でフィールドにマッチしない事を懸念していました。二人の哲学からも遠い道具達が多かったのです。

Andiは言う、「私たちならもっとうまくやれる」

二人の哲学“THE MAXIMUM OUTDOOR EXPERIENCE WITH MINIMAL MEANS”を体現する道具達を。。

そしてHeidiが応える、「とにかくやってみましょう。最悪”うまくいかない”だけで済むからね。」

  

そうして生まれたのがEXPEDブランド初の道具、ORIONです。

  

このテントは素材変更やより良いアップデートがなされ、今日まで継続して展開しているプロダクトです。

ORIONは当時無かった、独特なポール交差構造に、ルーミーな室内高を実現させた画期的なトンネル型テントでした。既に完成されたデザインに惚れ惚れします。

良い事は積極的に取り入れ、常に良い物へとアップデートしていく。EXPEDのコンセプトの象徴ともいえるプロダクトです。

こうして1997年、EXPEDというブランドが産声を上げたのです。

  

翌年以降は、このORION以外にも様々なテントを展開します。

今となっては見かけるような構造デザインですが、どれも当時は真新しいものばかりでした。

  

テントだけに留まらず、次に着想されたのはBIVYとPONCHOです。

これも今日のEXPEDでは脈々と受け継がれているプロダクトです。

このカテゴリをチョイスするあたり、二人の嗜好性が伺えますね。

  

更には知る人ぞ知る、EXPEDのそれ作っちゃう??の筆頭ともいえるプロダクト、DreamWalkerの始祖も最初期から存在したのです。

  

また、資料が残っておらず残念ですが、EXPEDが特許取得したシームテープ処理を施した初の完全防水ダウン寝袋、Waterbloc。(こちらも本国で未だに展開しています)

左右のファスナーでカップル同士連結が出来る寝袋や、卵型のシェイプをした広々空間で中で蹲るような動きも出来る寝袋など…

実にユニークな寝袋プロダクトが目白押しでした。

  

2000年になると、OEMではあるがトレッキングポールの展開も始まり、よりカテゴリの幅を広げます。

  

そして、ついにセルフインフレータブルタイプのエアマットの展開も始まります。

  

破竹の勢いで邁進してきた1997~2000年の3年間。

もはやEXPED AGはAndiとHeidiの想像をはるかに超えたチームとなり、たくさんの家族が出来ました。代理店時代よりも忙しい日々が続きますが、二人の精神は常に満たされていました。

そして2001年、先のエアマットの展開を機にその前後数年で様々なトライアンドエラーが繰り返されながら具現化された、あの革命的なプロダクトが世界に投じられるのです。

次回「ep.3 Innovation~革新~」乞うご期待ください。