ep.1
Birth~誕生~

始まりは他ブランドを取り扱う、小さなディストリビューターでした…

1983年、AndiとHeidiはEXPED AGを設立しました。そう、2023年EXPEDは40周年を迎えます。

この偉大なる節目の年に、今一度その歴史を掘り下げ、物語として紡いでいく連載企画です。

さて、今宵は物語の始まりの始まり、EXPED設立の更に前、1980年まで遡ります。

AndiとHeidi、愛を育み結ばれた二人には共通の夢がありました。

”大自然の荒野での孤高な経験”

その夢が二人を結び付け、より密接な関係をも築いたのでしょう。それはEXPED設立とも密接に関係しています。

そんな二人の稀有で不思議なハネムーンの始まりが1980年です。

場所はカナダ北部。二人は最低限の道具を背に、ハネムーンという名の冒険へ出発しました。

0からのスタート。まずは寝床として、斧やノコギリを駆使して丸太小屋を建てる必要がありました。

二人は丸太を切り出し小屋を建てるという知識や経験値が全くなく、直前に買った「丸太小屋の作り方」本を元に、

イソイソと作り始めたという。

しかも猶予は4週間しかなかったというから驚きです。

更に、結果的に建て終える事は出来たが、その本の最後に記されていた建築期間が実は”1年”だったというから驚嘆せざるを得ないです。

のちにHeidiはその小屋を”厩舎”のようだったと、親しみを込めて回顧されています。そのタフネスさも彼らの持ち味ですね。

しかし、この出来事により教えてくれたこともあります。最小限のインパクトとしての“Fast and Dirty”(素早さと汚さ)の相関性です。

それはすなわち、見栄えは”汚い”けど最低限の物事は機能してくれる”素早さ”を実現してくれるのです。それは後にも出てくる、EXPEDの根幹にある考え方に少し繋がるでしょう。

その後、冬の期間を含めた9ヶ月にわたり、彼らはその大自然の中で暮らし、生き延びました。

もちろん初めて森の熊さんとも遭遇しました!これは大自然の中では至極当たり前の事です。

特に厳しい時はマイナス40℃まで気温が下がります。そのような過酷な環境下において、もっとも困難だったことは”Uncertainty”(不確かさ)であるとAndiは振り返ります。

「明日は果たして何が起こるのか?やってくるのか?」

「それに対してどう対処すべきか?」

それは時として楽しみな部分でもあるが、時として何も起きない、”退屈”を産む可能性もありました。

その後者を予見したHeidiは、ハーモニカと色鉛筆を購入したそうです。音を楽しみ、絵描きを楽しむ。しかしその考えは杞憂に終わりました。最終的にはそんな悠長な時間は少なく、やるべきことが山積みだったという。。

アイスフィッシングを学び、食料を調達したり~

近くの湖から粘土を取り出し、ストーブを作ったり~

二人は意図的に食料やそれにかかわる材料の使用を50%に留め、残り半分は自然界から調達しようと考えたのです。

そのように課題を課すことで、”退屈”を持て余すようなことを無くし、2~3ヶ月後には完全にその生活に慣れてしまったそうです。それでも「私たちは若くて呑気にやっていた」と言うHeidi。

そして、一つの大きな学びを得られたと言う。。それは、

”THE MORE EQUIPMENT, THE MORE COMPLICATED”(道具は増えるほど複雑になる)

出来るだけ少ない道具、行動、衝撃をもって、より多くの知識やスキルでそれらを補うこと。それは極めて重要なことです。

これは正にEXPEDの根幹にある「最小限の道具で最大限のアウトドア体験を」にも通ずる部分があります。

そうして9ヶ月後、水上飛行機で第二の故郷を去る時、その荒野での滞在の痕跡を残さなかったという。。あくまで自然は我々が好きに”使わせてもらっている”フィールドであり、自己満足に終始してはいけない。

自然と人間とが共生するためにも、この行為考え方が必要であると考えたのでしょう。

このカナダ北部の荒野、大地が、二人の故郷となったのです。

この刺激的なカナダでのハネムーンを通じて、二人は常にアウトドアとの繋がりを大切にするようになりました。

時には故郷カナダでトナカイと一緒に冬の風景を楽しむ4週間のツアーを組んでみたり、、しかもテント泊で、、(でも実は3名参加者がいらっしゃったとか。素晴らしいです!)

そうして紆余曲折を経て、大きな転機が訪れます。あのLow Alpineがスイスのディストリビューターを探していました。これを大きなチャンスだと捉え、1983年EXPED AGを設立し販売代理店としての船出を始めました。

これが始まりの始まりから紡がれる、EXPED AG設立1983年までのお話です。

このカナダでの経験が、今後の二人を、そしてEXPED設立までの流れを、大きく担っていたことは言うまでもありません。

その時既に、AndiとHeidiの中ではEXPEDの礎が出来上がっていました。

“THE MAXIMUM OUTDOOR EXPERIENCE WITH MINIMAL MEANS”

“最小限の手段で最大限のアウトドア体験を”

それは自然への謙虚さと絶対的な孤独の中で自分自身を見つめ、自然と一体になるという究極の目標なのです

EXPEDの歴史が正に生まれ、紡がれ始める頃、その門出はやはり順風満帆ではありませんでした。。

次回、「ep.2 Dawn~黎明~」乞うご期待ください。