ep.3
Innovation~革新~
2001年、ついにそのプロダクトは世に放たれる。マット界に大きな革新を起こした”Down Mat”の登場です。
天然素材にして、最も保温効率が高いとされるダウンをエアマットのチャンバー内に敷き詰め、空気の対流を抑えながら断熱の層を作り、保温力を高めるシステム。
そのシステムは考え付いたとしても、製品化できるのか?と思われてしまうような構造でした。
奇しくも??初お披露目の展示会では、非公式とはいえ最もひどい製品に送られる、“Lemon Award”を送られてしまいましたが…
結果的に2002年のフリードリヒスハーフェンでの見本市で公式の“best-of-show Outdoor Award”を勝ち取りました。
※もし興味があれば、このDown Matの誕生秘話やR値についても触れた記事「FEATURE #2 “EXPEDとスリーピングマットの軌跡”」をご一読下さい。
この年、ひそかに投入された名品もある。それが今でも定番としてラインナップしているScout Tarpです。
その使い方からしてシンプルで、変化球をつけづらいタープに一石を投じた各辺にバンジーコードを仕込むという仕様。
これにより変則な張り方をしたときに生じる辺のシワや弛みを無くし、この仕様があるからこそ出来る張り方も実現させました。未だに基本的な設計は変わらず燦然とラインナップしている逸品です。
翌年2002年になると、定番のBivy Ponchoに加えてよりシンプルな構成ながらフックの利いたPackcover-Poncho と Exped Chaps が登場。
前者は現在ラインナップが続いているPack Ponchoの原型とも言えるでしょう。
そして先見の明が過ぎる….コンパクトに収納携行が出来るハンモック、Scout Hammock。
アメリカで生まれたバックパッキングとしてのハンモックムーブメントをいち早くスイス乃至はヨーロッパへ持ち込みました。
近年日本でもその汎用性、利便性の高さから、キャンプや登山ハイキングでも認知度が上がったハンモック。EXPEDでは20年も前から脈々と伝えてきたのです。
テント、シュラフ、タープ、ハンモックと、”居”にまつわるギアを拡充させ、2003年 EXPEDが次に着手したのは”Pack”。ストレージ系のPack Sacks シリーズの登場です。
今でも展開するアレやコレの原型と思しきパックサックがチラホラ見受けられますね。勿論、基本的に縫製部分へはシームテープ処理がされており、当時からEXPEDらしい仕様を追求していました。
2004~2005年になると、それら充実してきたカテゴリー内での派生、アップデートアイテムの開発に邁進します。
テントでは2~4人用がメインだった中、完全ソロ向けのミニマルで耐候性も高い Vela Ⅰ が。
定番のポンチョシリーズにも、Daypack Poncho や Bivy-Poncho Liner など、フックの利いた派生アイテムが登場。
マットカテゴリーでは、シンプルな Airmat シリーズと、フォームマットとエア部分とコンビネーションされた意欲作の Foam Airmat シリーズが仲間入り。定番のDownmat シリーズには厚みやサイズのバリエーションが追加されました。
更には原点に立ち返ったセルフインフレータブルタイプ SIM Light シリーズの復権、同時に初のマミー型へも挑戦します。マットアクセサリーも現行のSchnozzel Pumpbagの原型や、今でもちょっと気になるフットポンプタイプ等が拡充されます。
よりバリエーションにも富む、盤石な体制が整うこととなります。
ハンモックカテゴリーでは、アレとコレを足したら…という面白アイテム、Hammat が登場。スリーブ付のハンモックで、そこにマットが差し込めるという時代が早すぎた逸品。こういう少しヘンテコなアイテムも即具現化してしまうのがEXPEDの良い所ですね。
2006年に入るといよいよ、背負えるPackシリーズが展開し始め、40周年記念モデルも出たSplashの原点 Drypack Lite や、Torrentの原点 Drypack が投入されます。どちらも防水性にフォーカスしたのは他社にはないものを追い求めた結果でしょうか。
こうしてEXPEDのBACKPACKSカテゴリーに繋がっていくのです。
そういえばなかったよね!シリーズとして、初の枕 Stuff Pillow や Down Booty、寝袋のライナーシリーズも合流しました。
ダウンマットで培ったノウハウを存分に活かした、またもや世界初の化繊綿エアマット SynMat シリーズも登場し、マットカテゴリー内での現行ラインナップの基盤が整います。こちらはアウトドアインダストリーアワード銀賞も受賞している、誇らしいプロダクトです。
この年EXPEDのロゴも一新され、”EXPEDITION EQUIPMENT”の文言も添えられた現行に通ずる馴染みのあるロゴとなります。
2001~2006年は、正に革新的で刺激的な歩みを進めた6年間でした。
目を見張るほどの成長を遂げたEXPED AGは、並行して展開していたディストリビュータ業へも別れを告げ、いよいよ完全なメーカーとして羽ばたき始めます。
果たして次のステップではどんな展開が待ち受けているのでしょうか。そう、いよいよあのカテゴリーに本格的に着手するのです。
次回 ep.4 Breakthrough~躍進~ 乞うご期待ください。